マルチの国際会議で大事なこと
ASEAN日本政府代表部大使 紀谷昌彦
高校模擬国連のみなさん。おはようございます。ASEAN大使の紀谷昌彦です。
今年の全日本高校模擬国連大会の前に、ひとことご挨拶させていただきます。
私は大学模擬国連の第2期生として、1985年、今から40年近く前に全米模擬国連大会に参加しました。その後、外務省に入って国連も担当し、今はASEAN関連のマルチの国際会議の場で日本政府の代表として交渉し、発言しています。
模擬国連での経験が、今の私の基盤となっています。
これから模擬国連の会議に臨む皆さんに、マルチの国際会議の場で大事なことを三点、お伝えしたいと思います。
第一に、自分が代表している国の国民を代表するという自覚を持つことです。
あなたには、自国民の人生と幸せを左右する大きな責任があります。短期的のみならず中長期的な利益も視野に入れて、自国の利益が何かを突き詰めて考え、主張することで、本気度が伝わり、説得力が生まれます。
第二に、自国と同様に、他国の利益も十分に理解し、皆が支持できる共通の立場を創り上げることです。
他国の代表も、それぞれの国民の利益を担い、立場を代弁しています。その主張に耳を傾けて対話することで、国際社会として合意できる共通の目標と行動を見出し、実現していかなければなりません。
第三に、国としても、個人としても、他国の代表と信頼関係を構築していくことです。
信頼がなければ、他国との協力を実現することはできません。
国の力と個人の力の総合力、相乗効果が問われます。多くの国を巻き込んで、共通の立場を創り上げていくのは、結局のところあなたたち一人ひとりです。一人ひとりが信頼を勝ち得て、リーダーシップを会議の場で発揮していくことで、初めてより良い世界が実現できるのです。
この模擬国連は、単なる将来に向けての練習の場ではありません。皆さん一人ひとりは、既に世界とつながっている、立派な「アクター」なのです。そして、これからどのような職場で、どのような仕事をすることになっても、未来の世界を創る担い手であり続けます。あらゆる地球規模課題に直面している世界は、今、皆さん一人ひとりの行動を求めています。
今回の模擬国連をきっかけに、「今、ここ、自分」から、目の前の一つ一つの課題に挑戦し、あらゆる失敗や成功から学び、より良い世界を一緒につくりあげていきましょう。
まずはこの2日間、全日本高校模擬国連大会の場でご健闘ください。