―参加されたきっかけは何でしたか。
同級生に誘われたことが、そもそも大会を知ったきっかけです。参加を決めたのは、恵まれた稀有な機会だと確信したからです。私は当時、官僚を志していました。模擬国連総会に各国の代表として参加し、そこで頭角を現しながら議論して世界的な議題の解決へ歩を進めていく、という一連のタスクやそこで必要な能力が、私の夢の助けになると考えました。そして私の予測以上に、そこで得られるモノに価値があると感じたのです。
―大会に向けた準備について教えてください。
期間的には他の出場者より少ないと思います。そしてリサーチしかしていませんでした。ただ濃密な1ヶ月を過ごしました。まず、議題に関する予備知識を徹底的にネットや書籍で調べて理解しました。ここで傲ったりせずに初歩に立ち返る作業が重要だと思ったのです。担当国が決まった後は、その国の立場や方針について関連ホームページなどで調べました。私が参加したのはエネルギー安全保障という議題でしたが、そのテーマにおいて自分たちがどのように行動すれば国益に繋がる結果を生むか、をイメージしていました。そして最後にオリジナルな作戦を用意していました。例えば、専門機関で働く人にインタビューなどをして、ネットだけでは得られない情報を集めました。私の場合は日本原子力研究開発機構の方に最新技術について伺いました。後は時間の許す限り、他国の立場について調べて整理しました。
―参加して良かったと思いますか。
大会に参加したことは今でも私の誇りです。今振り返ると、高1の私はとても小さな人間だったと思います。頑固で快闊な、だけど普通の高校生でした。世界が狭い田舎で頑張ったところで、その外にいる実力者に会えない。井の中の蛙大海を知らず、です。当時の私はこの言葉に尽きます。模擬国連は私を井の外の世界を魅せてくれたのです。
模擬国連を経て、私は成長しました。会議の独特の緊張感や研ぎ澄まされる集中力を体感しながら、人を巻き込む弁論力、他人の意見も聞き入れる寛容さを高めていきました。それだけでなく、人間力も高まったと感じています。自分に対する自信や、他人への信頼。独壇場が重要だと思わせないグループワークの存在感。私はこれらを経て、一回り大きな人間になったと自負しています。
そして私が1番感謝していることは、たくさんの優秀な参加者に出会えたことです。今でも交流があり、私が躓いたとき、彼らの存在が支えとなってくれました。切磋琢磨して、ともに人生を描いています。
―参加にあたり、苦労されたことはありますか。
私の高校は、模擬国連という活動を経験したことがなく、私たちペアがパイオニアの状態でした。つまり情報がないのです。大会の様子、会議運営の方法、リアルな雰囲気、他の参加者のレベル、など大会そのものの情報が全くありませんでした。なので、会議の練習もできませんでした。そのことが準備において悔やまれることでした。今だから言えることですが、会議が始まった直後の会議全体の動きにいちいち挙動不審でした。
誰にでも得意不得意があるように完璧な準備など無いのです。自分たちに出来ることを精一杯やることが、練習不足をカバーできる唯一の手段だと信じ、リサーチに力を入れました。
―これから参加する高校生にメッセージをお願いします。
自分の努力を信じ、背中を任せる信頼関係を相方と築いて、全力で挑んでください。ただ悔いを残さないでください。