2011年11月12日(土)-13日(日)、東京の国連大学におきまして、第五回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国36校から 51チーム102名にご参加いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。
日 程: 2011年11月12日(土)-13日(日)
会 場: 国連大学本部
議 題: エネルギー安全保障 (Energy Security)
会議場: 国際連合総会経済・財政委員会(通称 第二委員会)
(United Nations General Assembly, The Economic and Financial Committee)
■会議紹介
本年の全日本大会では「エネルギー安全保障」を選択しました。エネルギーは、私たちの生活の隅々にまで影響を及ぼす身近な存在です。「電力」、「ガソリン」などの言葉に置き換えれば、さらにその身近さを実感することが出来るでしょう。したがってこの「エネルギー」にかかわる問題は、影響を受ける人が比類なく多い国際問題の一つということになります。そのため常に人々の注目を集めますが、その全体像を理解する機会はあまりないのではないでしょうか。
本大会は高校生にとってその格好の機会となるものと考えています。
また、エネルギーは、国際社会のパワーバランスや国際政治の力学を見るのに最適なものさしの一つということができます。産油国と新興国のエネルギー政策とその影響力を見れば、かつてのように米欧日を見ていれば国際社会を見通せた時代はすでに過ぎ去ったことが理解できます。国際社会の中では産油国や新興国があらゆる手段を使って、欧米諸国が持っている既得権益を奪おうとする場面が見られます。そこにおける手段の一つがエネルギーなのであり、それがゆえにエネルギーの問題は単なる経済の問題としてではなく安全保障の問題とも関連付けて議論されるのです。
19世紀は「石炭の時代」、20世紀は「石油の時代」と言われてきました。21世紀に入った現在、なおもエネルギー利用における石油の果たす役割は大きい一方で、天然ガス・原子力・再生可能エネルギーなどの技術も代替手段としての十分 な可能性を有しています。参加者のみなさまには「21世紀のエネルギー利用の理想的な形」を議論していただきたいと考えています。
模擬国連会議では参加者に「国際会議に参加する政府の代表」である外交官となってもらいます。外交官たちの議論には、唯一絶対的な正解などは決して存在しません。模擬国連においてもそれは同じです、皆さんには本大会の始まりから終わりまで、「正解のない問いに挑む」という気概をもって会議に臨んでいただき、外交の醍醐味を体感していただきたいと思います。
■会議の流れ
〈会議初日〉
会議開始冒頭では、スピーチを多めに回しました。その後、主に自由に立ち歩いて交渉のできるUnmoderated Caucus において、グループごとに分かれて決議のたたき台となる決議案(DR)の作成が行われました。結果として、5つのDRが提出されました。
DR提出後は、議長提案によるModerated Caucus において、各グループの代表者が、①各グループの構成員、②DRの内容などをすべての国に共有しました。
〈会議2日目〉
修正案(アメンドメント)作成の交渉の結果、5本のアメンドメントが提出されました。その後、議長提案によるModerated Caucusにおいて、提出されたDRやコンバイン案2対するコメントや質問を各グループが行っていきました。
スピーチを多く回した後、投票行動に入りました。5本のアメンドメントが投票にかけられ、すべての文書が賛成多数で可決されました。
■会議総括
今年度の大会は「エネルギー安全保障」という議題で行われました。
各国での安定的なエネルギー供給のためには何をしなければならないのか、特に「エネルギーに妥当な価格がつけられている状態」と「必要なエネルギーがしっかり手に入る環境が整備されている状態」を確保するためにどのような事が必要なのか、大使に扮した高校生達が2日間熱心に議論を重ねました。
議場では主に、
1.再生可能エネルギーによる供給増量
2.原油価格安定
3.エネルギー供給国への技術援助
4.エネルギーに関する既存の国際機関の協力状況
について各国大使が自国との利害関係、地理的関係に基づいてグループを構成しながら議論を行いました。
燃料供給のパイプライン建設の必要性や、今後の技術援助の必要性をはじめ、大まかな行動方針や長期的な目標については各国が似たような姿勢を見せる中、細かな行動方針や短期目標については意見が割れ、実際の国際会議さながらの議論が進められました。
例えば、エネルギー供給について統括する新たな国際機関創設の是非については意見が終盤まで各国が割れていました。既存の機関の効率化ではどう都合が悪いのか、エネルギー安全保障について現在各国の声が平等に扱われているのかといった疑問を出し合い、各国が白熱した議論を繰り広げていました。
結果的には、1日目の終わりに5つの決議案が提出され、
2日目それぞれの決議案に修正が加えられたものが投票にかけられ、
すべて決議として採択されました。
決議の内容に目立った対立はなく、それぞれ性格の異なる決議が採択されました。
大会中は、想像力に富んだ高校生ならでは斬新なアイディアが多く見受けられました。自分たちで考えたアイディアを現実社会で実行しようとした時、どのような調節を行えばより現実的な案になるのか、その過程でどのような困難があるのか、それぞれに感じる事があったのではないかと思います。
議題についての現状を認識し、自国・国際社会の利益両方を考えながら問題解決のための決議を作り上げるのは非常に大変な事です。準備期間及び大会2日間を通し、高校生達は見事に大使としての役目を全うし、沢山の事を学んでくれた事でしょう。
■受賞校
最優秀大使賞:慶應義塾湘南藤沢高等部
優秀賞:栄光学園高等学校、実践女子学園高等学校、渋谷教育学園幕張高等学校、聖心女子学院高等科
ベストポジションペーパー賞:開成高等学校
会議監督特別賞:渋谷教育学園幕張高等学校、東京学芸大学付属国際中等教育学校、県立日高高等学校