実施報告 第12回全日本高校模擬国連大会

2018年11月17日(土)- 18日(日)、東京の国際連合大学におきまして、第12回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国141校(215チーム)からご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。

日 程: 2018年11月17日(土)-18日(日)
会 場: 国連大学本部
議 場: United Nations General Assembly 73rd Session Disarmament and International Security Committee (1st Committee)
議 題: Arms Transfers

■会議紹介(文責:会議監督)

 みなさんはニュースや新聞等で、テロ事件や紛争などを見聞きすることがあるかと思います。しかし、そのテロや紛争で使用されている銃器や爆弾などの兵器がどこから手に入れられているのかについて考えたことはおそらくないかもしれません。
 ニュースなどでは、核兵器に関するものが話題になっておりますが、世界で起こっている紛争やテロ行為で使用されている兵器のほとんどが、銃器や爆弾などの「通常兵器」です。また「通常兵器」のなかの拳銃などの小型武器は、「事実上の大量破壊兵器」といわれており、警察官が所持しているようにみなさんの身近なところに存在します。
 これまで国連などでの国際会議では、紛争やテロのない平和を目指し、その兵器がどのようにして紛争やテロの当事者の手に渡らないように、いかに武器を管理していくかについて議論され、通常兵器の輸入量や輸出量などを報告する「国連軍備登録制度」といった合意や行動計画が採択されました。また 2013 年には武器貿易条約という初の通常兵器移転に関する国際的規範が採択されました。しかし、武器に関する情報は国家の安全保障にかかわるものであるため、その合意で定められた内容を実行しない国家も存在しています。また、2015 年にサウジアラビアなどがイエメンに軍事介入を行いましたが、その際にイギリスやフランスなどの武器貿易条約に批准した国々がサウジアラビアに大量の武器を輸出していた事実が明らかになり、武器貿易条約の存在意義について疑問視されています。
 みなさんがニュースなどでよく見る国際問題はいわゆる「氷山の一角」にすぎません。その問題の背景には、武器を売る国家や企業が存在し、そして武器を売るにしても、そこにはそれまでの議論によって定められたルールが存在します。この会議を通して表層的な問題だけでなく、その背景にあるアクターやルールにも目を向けて議論し、解決策を生み出そうとする意欲のある皆さんに向けて、今回の議題を設定しました。


■会議の流れ(文責:会議監督)

本会議では「武器移転」というテーマのもと、これまで行われてきた国際的な議論を踏まえて、武器移転における国際的な規制について話し合いが行われました。論点は以下の 2 つでした。1 つ目は「透明性措置の再検討」ということで、具体的にはこれまで国際社会において行われた通常兵器の移転について、どの国からどの種類の兵器をどれくらい輸入したのか、あるいはどの国に輸出したのかを明確にするために行われた制度について問題点を分析し、どうすれば改善できるかを議論しました。2 つ目が「非国家主体への武器移転規制」ということで、これまでは国家間の武器移転規制を扱っていましたが、近年テロ組織などによる武力攻撃が増加していることから、どのような主体に対してどのような方法で武器移転規制していくべきかについて議論しました。

<議場 A>

 議場 A では、会議冒頭に議長から 2 つの論点をこれからどう議論すべきかを話し合うことが提案されました。多くの大使がその提案に賛同を示し、着席討議(Moderated Caucus: MC)において今後の議論の進め方について話し合いがなされましたが、各国間の意見の齟齬が多様化し、その後のグループ形成について統一見解は取られませんでした。その後は非着席討議(Unmoderated Caucus: UC)で徐々にグループが形成され、適宜情報共有をはさみながら、作業文書(WorkingPaper: WP)の作成を目指し交渉が進められました。結果的に 1 日目終了時に 7 本の WP が提出されました。
 2 日目は 1 日目の WP を基本として、全会一致による決議案(Draft Resolution: DR)の作成が行われました。グループの統合も行われ、最終的には 3 本の DR が提出されました。3 本全てが投票した国の中で過半数の賛成を得て可決されましたが、どれも一定数の反対国がおり、全会一致での採択には至りませんでした。

<議場B>

 議場 B では会議冒頭で MC が採択され、2つの論点をどのような順番で話し合うかについての議論がなされました。議論の進め方については決まりませんでしたが、その後に取られた UC では、地域ごとのグルーピングなど似たようなスタンスの国々で集まり、非国家主体の定義などについての意見共有が行われました。UC では大きく分けて7つほどのグループが形成されていましたが、次に取られた MC では、グループ内のスタンスや非国家主体の定義づけの確認が議場全体に向けて行われました。その後は、WP の作成に向けて、具体的な政策レベルで交渉が進められ、1日目終了時までに6本の WP が提出されました。
 2日目は、6本の WP のコンバインに向けた交渉が始まり、議場では大きく分けて3つのグループが確認されました。最終的に2本の決議案が提出され、いずれも全会一致には至りませんでした。最初に提出された DR.1 は惜しくも反対多数で否決されてしまいましたが、DR.2 は賛成多数で採択されました。


■受賞校一覧

最優秀賞
会議 A:New Zealand 大使  桐蔭学園中等教育学校Bチーム(神奈川)
会議 B:United Kingdom 大使  渋谷教育学園幕張高等学校Bチーム(千葉)
優秀賞
会議A:Ghana 大使  浅野高等学校Aチーム(神奈川)
     Belgium 大使  灘高等学校Aチーム(兵庫)
会議B:Ghana 大使  麻布高等学校(東京)
    Iran 大使  聖心女子学院高等科Bチーム(東京)
選考員特別賞
会議A:Iran 大使  海陽中等教育学校(愛知)
会議A:Syria 大使  岐阜県立岐阜高等学校(岐阜)
ベストポジションペーパー賞
会議 A:Canada 大使  和歌山県立田辺高等学校(和歌山)
会議 B:Pakistan 大使  田園調布学園高等部(東京)