実施報告 第11回全日本高校模擬国連大会

2017年11月11日(土)- 12日(日)、東京の国際連合大学におきまして、第11回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国156校(233チーム)からご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々に心より御礼申し上げます。

日 程: 2017年11月11日(土)-12日(日)
会 場: 国連大学本部
議 場: United Nations General Assembly 72nd Session Social Humanitarian and cultural Committee
議 題: Human Rights and Gender Equality

■会議紹介(文責:会議監督)

 「ジェンダー」という言葉は、みなさんにとってどれくらい身近なものでしょうか。社会的・文化的に作られた『性差』を意味するこの言葉を、最近では耳にする機会も多いかもしれません。ではなぜ男女はそもそも平等、あるいは平等ではないと考えられているのでしょうか。差別とは何を指し、なぜそのような差別が起こるのでしょうか。深く考える機会はあまりないかもしれません。
 世界には、女性に対する差別が未だ多く残っています。女性器切除や名誉殺人などが実際に行われている一方で、多くの人の中にも無意識な差別が存在します。それは古くから続く文化的風習であったり、宗教に基づく価値観であったり、こういった「常識」に人々は無意識のうちに縛られています。それらは「文化の多様性」なのか、それとも人権の侵害として否定されるべきか。この対立のなかで国際社会はこれまで十分な解決策を見いだせないまま、差別は依然残っています。しかし近年では、2011 年に活動を開始した UN-Women による「HeForShe キャンペーン」について、エマ・ワトソン親善大使がスピーチしたことが話題になるなど、国連はこれまでさまざまな努力により、ジェンダー平等の達成に向けて取り組んでいます。
 加えて近年では、セクシャルマイノリティとよばれる人々の権利をめぐる議論が活発化しはじめ、実際の国連でも激しい対立が見られます。日本でも徐々に権利が認められてはいますが、未だ制度上の制約や社会的な差別はなくなっていません。世界に目を向けても、法改正などが積極的に進んでいる国もあれば、厳しい法規制を敷く国もあります。たとえば今年公開されたディズニー映画『美女と野獣』は、同性愛のシーンが含まれるためにロシアでは年齢規制があったり、マレーシアでは公開中止が求められたりと、波紋が広がっています。ジェンダー平等とは、決して女性のエンパワーメントをはかることだけではないのです。
 模擬国連では、みなさんに一国の代表の立場から議論していただくことになります。みなさんの価値観とは大きく異なる国を担当することもあり、戸惑うこともあるかと思います。しかし、その違いに向き合い、理解し、その上で議論することによってこそ、この問題をもっとも深く理解することができ、そこに模擬国連のひとつの大きな意義があります。問題に本気で向き合い、議論し、解決策を生み出そうという意欲のあるみなさんの参加をお待ちしています。


■会議の流れ(文責:会議監督)

 本会議では「ジェンダー平等」というテーマのもと、これまで行われてきた国際的な議論を踏まえて話し合いが行われました。論点は以下の 2 つでした。1 つ目は「ジェンダー平等とは何か」その定義や理想状態、またその状態に向けたアプローチをどのような原則のもとでとるべきか、といった点を提起し、具体的には性的指向・性自認をジェンダー平等にどのように反映させるか、宗教や文化に基づく多様な価値観をどのように認めるかを検討しました。この論点については全参加国の合意がとられるべきとの認識のもと、「人権とジェンダー平等に関する宣言(Declaration on the human rights and gender equality)」というコンセンサスで採択されることを原則とした成果文書の作成を目的としました。2 つ目が「ジェンダーに起因する差別・暴力への対処」ということで、FGM(女性器切除)や児童婚、人身取引といった有害とされる文化や慣行をどのように取り扱うかを検討しました。こちらの論点については決議(Resolution)の作成を目指しました。
 会議の開催に先立ち、「限られた時間内で効率的に議論を行う必要がある」「1 つ目の論点が 2 つ目の論点の前提となる」という見解のもと、会議冒頭に全体で論点 1 について話し合うことが議長から提案されました。


<議場 A>
 議場 A では議長の提案に多くの大使が共通の見解を持っていたようで、会議冒頭で着席討議(Moderated Caucus: MC)において論点 1 の話し合いがなされました。各国間でどのような意見の齟齬があるのかが確認されましたが、その対立軸の多様さからその後のグループの形成にあたり統一見解は取られませんでした。その後は非着席討議(Unmoderated Caucus:UC)においてグループの形成が徐々に行われ、宣言案および作業文書(Working Paper:WP)の作成を目指して交渉が進められました。結果的に 1 日目終了時に 3 本の宣言案、3本の WP が提出されました。
 2 日目は 2 本の宣言案が統合され、また 2 本の決議案も提出されました。宣言は本来コンセンサスで採択されるべきものでしたがどちらもコンセンサスとはならず、1 本のみ可決されるという形となりました。決議案も、否決された宣言案を想起した決議案は否決され、1本のみ可決となりました。

<議場B>

 議場 B では、会議冒頭で MC が採択され、論点1における各国のスタンスや議論の方針について話し合いが行われました。その後の UC では、各国のスタンスに基づいた数個のグループが形成され、各々で宣言案の作成が行われました。また論点2についての議論も並行して行われました。最終的に宣言案 3 本と WP 1 本が受理されました。
 2 日目は、1 日目に提出された宣言案と WP を元に、国内調整ならびにグループ間調整が行われました。時間的制約や提出条件の不備により、受理できない文書もありましたが、修正案・決議案それぞれ 1 本ずつ提出されました。提出後も最後まで、粘り強い交渉を続ける国も見られました。最終的に宣言案の修正案が全会一致、決議案は賛成多数で採択されました。


■受賞校一覧

最優秀賞
会議 A:Mexico 大使  海城高等学校(東京)
会議 B:United Arab Emirates 大使  桐蔭学園中等教育学校Bチーム(神奈川)
優秀賞
会議A:Ethiopia 大使  渋谷教育学園渋谷高等学校Bチーム(東京)
     Norway 大使  鳥取県立鳥取西高等学校(鳥取)
会議B:Poland 大使  頌栄女子学院高等学校Aチーム(東京)
    Slovakia 大使  浅野高等学校(神奈川)
ベストポジションペーパー賞
会議 A:France 大使  西大和高等学校Aチーム(奈良)
会議 B:France 大使  渋谷教育学園幕張高等学校(千葉)