実施報告 第6回全日本高校模擬国連大会

2012年11月10日(土)-11日(日)、東京の国連大学におきまして、第六回全日本高校模擬国連大会を開催いたしました。本大会には全国97校(137チーム)ご応募いただき、盛会のうちに幕を閉じることができました。この場を借りて、参加者の皆様及び暖かいご支援・ご協力を賜りました方々 に心より御礼申し上げます。
日 程: 2012年11月10日(土)-11日(日)
会 場: 国連大学本部
議 題: 核軍縮 (Nuclear Disarmament)
会議場:第67会期国連総会軍縮・安全保障委員(通称第一委員会)(United Nations General Assembly, Disarmament and International Security Committee)

■会議紹介(文責:会議監督)

1945年に開発されて以降、核兵器の存在は今なお国際社会に強い影響力を持ち続けています。広島と長崎に対して行われた核兵器の使用は世界に衝撃を与えましたが、核兵器の利用禁止や廃絶という選択には至らず、冷戦期に入ると世界各地で核兵器の製造競争が始まり、最大時には7万発の核兵器が地球上に存在したと言われています。このような状況の下で、「部分的核実験禁止条約」、「核兵器不拡散条約」が世界的に締結され、地域レベルでは非核兵器地帯の設置が進むなど、核軍縮・軍備管理がある程度進展したものの、核兵器は軍事的・政治的に大きな影響力を担い続けました。

冷戦の終了は核廃絶に向けての大きな一歩となると考えられました。しかし、インド、パキスタン、北朝鮮など、「核兵器不拡散条約」で核兵器の保有を認められていない国家が新たに核実験を行い、イラン及びイスラエルの核保有疑惑が持ち上がるなど核拡散は近年逆行しています。またテロリストへの核不拡散という冷戦期には想定されていなかった課題も浮上し、核兵器をめぐる問題はむしろ複雑化していると言えます。核兵器は第二次世界大戦や冷戦期のような過去の話ではなく、現在私たちが生きる世界に確固として存在します。

それでは核廃絶が究極的な目標として共有されているにも関わらず、核兵器をめぐる問題が一向に解決されないのはなぜでしょうか。それは核兵器をめぐる問題が各国の利益に直結する問題であるからだと私は思います。各国は独自の様々な背景を持ち、自国の利益を追求して行動します。各国の利害が激しくぶつかり合う核兵器をめぐる問題の複雑さを、皆さんには模擬国連を通してぜひ感じてほしいと思っています。日本の立場からではなく、アメリカの立場から、インドの立場から、そしてみなさんが名前も聞いたこともないような国の立場から核兵器をめぐる問題を考えることは核兵器を新しい視点から捉え、核兵器をめぐる問題の複雑さを理解する手助けとなるでしょう。自分では今まで思いつかなかった、核兵器をめぐる問題の解決を阻む要因が模擬国連会議を通して見えてくるでしょう。会議を通して、また会議が終わった後に、核兵器をめぐる問題解決の糸口を皆さんが見つけ出すことを願っております。

■会議の流れ(文責:会議監督)

<会議1 日目>
 会議冒頭で数カ国のスピーチが行われた後、Unmoderated Caucus を中心に交渉が行われ、途中にModerated Caucus におけるグループ間の現状共有を挟みながら、決議のたたき台となる決議案(DR)の作成が行われました。各DR のスポンサー国をめぐる混乱があったものの、最終的に4 つのDR が提出され、その後各DR の内容がModerated Caucus において共有されました。

<会議2 日目>
2 日目の午前中は交渉結果のさらなる反映を目指し、修正案(アメンドメント)の作成が行われました。2 つのDR グループがコンバインを目指しましたが成功せず、DR.1 は修正案として提出できずに、最終的に3 つのアメンドメントが提出されました。
アメンドメント提出後もUnmoderated Caucus において交渉は続けられましたが、認識の違いを乗り越えられないグループもあり、最終的に1 つのDR、3 つのアメンドメントが投票に付され、3 つが可決、1 つが否決されました。

■会議総括(文責:会議監督)

議場では主に、非核兵器地帯、Missile Defense、核燃料バンク、核兵器禁止条約などについて、NPT(核兵器不拡散条約)やCTBT(包括的核実験禁止条約)と関連づけながら議論されました。

非核兵器地帯については、中東非核兵器地帯の設立を目指す中東+中国のグループと、東欧非核兵器地帯の設立を目指すヨーロッパを中心とした国のグループ、既存のバンコク条約、ペリンダバ条約、ラロトンガ条約、トラテロルコ条約の統合による南半球非核兵器地帯の設立を目指す南半球の国を中心としたグループ、東アジアを中心とした地域の非核兵器地帯設立を目指すアジア諸国のグループの4つのグループが存在しました。

この4つのグループ分けはその他の論点についても波及し、最終的に4つの決議案が1日目の最後にこれらの4つのグループから提出されました。
2日目はそれぞれの決議案の修正が各グループ間の交渉を経て進められました。
この過程で2つのグループによる決議案の統合も目指されましたが、失敗に終わり、最終的に4つの決議案が投票へとかけられ、3つの決議案が賛成多数で可決、1つの決議案が反対多数で否決されました。

参加者に事前に配布された議題概説書には詳しく説明されていなかったMissile Defense、核燃料バンク、核兵器禁止条約についての議論も活発化し、また、南半球非核兵器地帯といった現実の枠組みを越えた提案もなされ、高校生ならではの様々なアイディアが発揮された会議でした。
また、1つの決議案が否決されるなど、参加者は自国の主張に対する賛同を得ることの難しさ、交渉の難しさを実感したことでしょう。

2日間に渡る交渉の中で様々な提案がなされましたが、自国の提案および相手国の提案が自国の国益に適っているかという判断の点で苦労した参加者も多かったように思われました。
1カ国の大使を務めるという模擬国連の特質を踏まえ、国益という観点により一層目が向けば、会議のさらなる充実が図れることと思います。

■受賞校

最優秀賞:灘高等学校Aチーム
優秀賞:開成高等学校Bチーム、実践女子学園高等学校Aチーム、桐蔭学園中等教育学校Aチーム、渋谷教育学園幕張高等学校Bチーム
審査員特別賞:西大和学園高等学校Aチーム
ポジションペーパー賞:聖心女子学院高等科Aチーム